電氣學會雜誌
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パンタグラフ摺板の耗り方に就て
摺板の耗り方より見たるパンタグラフ及びカテナリー構造の設計に關する諸問題
小宮 次郎
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1933 年 53 巻 537 号 p. 328-337

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抄録

摺板とトロリー線との耗り行く機構に關し先づ室内試驗を行ひて,(I) 單なる摩擦の場合に在りては銅は粉末となりて脱落し,(II) 電氣火花を伴ふ摩擦に在りては銅は鱗状片となりて著しく脱落することを確めた。而して之と同樣なる現象が實際の電車運轉の場合にも起りつつあることを,車輌屋根上に遺棄しある銅の粉末及び鱗状片が室内試驗の際發生したるものと略同一程度のものなることに依り推斷した。
摺板表面の状態を調査して面を四種に區分し,本文に謂ふ所のD種面には剥脱以前の鱗状片が著しく發達し居ることを確めた。而して此のD種面は火花に依り發達すべきものなることの徑路を考察した。
摺板の壽命ほ表面に溝及び穴を生ずることに依り短縮せらるるものなることを統計を以て確めた。而して穴の周圍は主として所謂D種面なることの事實に依り火花の發生は穴の生成を促進するものなることを確めた。
摺板の壽命は氣温に伴ひ變化するものなることを,過去2ヶ年間に使用したる摺板1,757枚の統計に依り指摘した。更に氣温の上昇が摺板壽命を短縮し,氣温の下降が摺板壽命を伸長することは,主としてトロリー線張力の變化に依存するものと爲し,氣温の上昇に依る張力の減少が,一方に於ては摺板面に溝の發生を容易ならしめ,他方に於ては火花の發生を促進して表面剥蝕の度を増加せしむる所以を考察した。
斯くて摺板壽命に惡影響を及ぼすべきパンタグラフ及びカテナリー構造の設計上の諸點に論及した。

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