1933 年 53 巻 540 号 p. 527-534
種々の周波數の交流電壓及び衝撃電壓を加へた場合のコロナ放電に伴ふ導線の機械的振動に就て實驗し,直流電壓を加へた場合の同樣の現象と比較し,振動の原因及び機構に觸れた。最後に實際の送電線に於て斯樣な振動現象が發生し得るや否やを推察するため154kV送電線の模型に就て振動試驗を行つた。
50乃至350サイクルの範圍に於ては振動數は加へる電壓の周波數に無關係で,直流電壓を加へた場合の振動數に略等しい。即ち,此の場合も,加へる電壓の周波數に關係無く導線の固有振動に近い振動が誘起されるのである。衝撃電壓を加へた場合も直流電壓及び交流電壓を加へた場合と同樣の振動が發生する。前報告に詳述した樣に,イオンの運動に依つても振動が發生し得るが,交流電壓の場合は此の外に靜電的力が脈動的(脈動數は電壓の周波數の2倍)に働き,之に依つて振動が發生され,且つ,之が極めて有力である。實際の送電線に於ては常規電壓の下では斯樣な振動は發生し難いが,異常高電壓が加はれば相當の大きさの振動が發生し得る。154kV送電線では大體1,000kV以上の電壓が加はれば相當の振動が發生するものの如くである。