電氣學會雜誌
Online ISSN : 2187-6797
Print ISSN : 0020-2878
ISSN-L : 0020-2878
磁界型電子レンズの解析的一考察法
菅田 榮治
著者情報
ジャーナル フリー

1939 年 59 巻 611 号 p. 290-296

詳細
抄録

回轉對稱なる電磁界内を其の對稱軸近く運動する電子の軌道を與へる微分方程式の初期條件を満足する解を求め,陰極面の電子像が作られる爲に必要且十分條件を演釋した後,此の條件を滿たす所の電磁界の形状は軌道微分方程式の線型的獨立解の一つが少くとも二つの零點を有する事が必要な事を明かにした。此の一般理論を磁氣型電子レンズに對し其の磁界分布に矩形分布を假定する事に依り解析的に發展した上で其の持つ物理的意義を明かにした。之に依り陰極線軌道の一部分にのみ作用する不平等磁界の半徑方向の磁束分がレンズ作用に對して有する役割を明かにした。此の發展せる簡便な解析的方法を應用して磁氣型電子レンズの磁界の強さ及び其の作用範圍竝に電子加速電壓等の間に存在する關係を數式的及び圖的に與へた。若しも磁界の作用範圍が之よりりも長くなれば電子は磁界中で回轉され且磁界中に電子像が作られる結果,螢光板上に現れる電子像は鮮明度が低下するに至る。磁氣型電子レンズの擴大能,陰極面螢光板面間の距離,加速電壓及び磁界の強さの間に存在する簡單な關係式を求め,之に依り磁氣型電子レンズの擴大能の限度を與へた。即ち100ekVの陰極線,50cmの陰極螢光板間の距離を用ひれば,今日の磁氣材料では一段擴大率は900を越す事は不可能である。

著者関連情報
© 電気学会
前の記事 次の記事
feedback
Top