抄録
既往研究では「暗いから明るくする」というのではなく、「歩ける・歩けない」「見える・見えない」という身体的概念から分析を行い、その結果インフラの整備により歩行は可能であるが、周辺部が見えないことにストレスを感じていることがわかった。また、そのストレスは「街路周辺部に存在する奥まった空間」(以下ボイド)に存在するため街路空間の概念は街路周辺部を考慮する必要があると示唆された。<BR> 本報ではこの概念に基づき、岩手県大野村のまちづくりに際して計画された一期工事部分における光環境調査(2002年6月)と、二期工事部分での実地実験(2002年8月)の結果について考察し、光環境のあらたな可能性とその問題について検証した。
その結果、夜間街路におけるボイド照明の有効性が改めて示され、街路照明計画の可能性を拡げる新たな事例が生まれた。また、このような概念を踏まえた実地実験の考察から今後は、街路ごとの形状や住民意識の違いで必要な光環境を捉える必要があると考えられる。