2021 年 19 巻 1 号 p. 56-68
Michael Balintは,全人的医療の目的を「患者の自己理解を可能にさせ,直面している問題のよりよい解決方法を見いださせ,患者の環境との関係障害を統合させること」と述べた.彼は,患者や医師の特性や医師―患者関係をユニークな言葉で表現した.一方,Aaron Antonovskyは健康創成論において,人生のどのステージにおいても相対的健康を創成するには,コヒアランス感(SOC)が重要であると説く.SOCは理解能力,管理能力,意義深さの3要素から構成されている.患者が,患者力を向上させることにより,医療社会がどのようであっても,自身の相対的健康を創成できると考える.そのためには,まず患者が自分を取り巻く医療社会,特に医師の特性と医師―患者関係を理解できることが重要である.Michael Balintのユニークな言葉を利用することは相対的健康の創成,すなわちSOC向上の一助になると考える.