抄録
本論文では, 文字パターンの距離情報と構造情報とを併用する認識法を提案する. 距離情報としては入力パターンと標準パターンとの対応ストローク間のずれの総和であるパターン間距離を用いる. 構造情報としては入力パターンを構成するストロークの相対位置関係が標準の相対位置関係と不一致となる相違度を用いる. 識別はパターン間距離と相違度の加重平均により行う. これは, 距離と構造を統一的に記述するために新しく導出した行列形式により, 両者の独立性が高いことが判明したことに基づく. 自由手書き漢字認識に適用した結果, パターン間距離の単独使用に比べ, 正読率の向上および誤読率の低減が得られ, 本併用法の有効性が確かめられた. また, 構造情報はパターン間距離が大きくなったため識別できなくなった文字を救済する相補的役割を演じていることが明らかとなった.