抄録
近年, 計算機ネットワークを通した三次元情報の提供と, そのネットワークを介しての共有を行う場面が増加しつつある. このとき, 計算機ネットワーク上には様々な表示処理能力を持った端末が接続されている. しかし, すべての端末の表示処理能力を事前に把握し, 個々の端末に最適化した三次元物体データを用意することは困難である. そこで, 本論文では, 表示端末に動的に受信データに対応する適応表示機能を持たせることで, 伝送後の三次元物体データの適応的な最適表示が実現できることを示している. ここで, 表示処理の最適性を評価しながら適応するときに, その最適性の評価基準としては, 三次元物体の表示品質に影響を及ぼす幾つかの要因に着目して主観評価実験を行うことにより得られた表示品質要因間の重みを利用した表示品質評価関数を用いている. この結果, 端末の表示処理能力が低い場合には, 人間が気付きにくい部分から三次元物体データが優先的に簡略化されて表示されることになる. 実際に三次元物体表示システムを試作し, 提案した手法の有用性を確かめている.