2010 年 39 巻 2 号 p. 195-203
デジタルカメラによって獲得された画像は,種々の視覚特性を有する人間の 見えとは異なることが多い.人の視覚特性を考慮した画質改善手法として,Retinexモデルが知られている.Retinexは,照明光の影響を除去しながら シーンを獲得するという視覚特性を反映した画像をカメラ画像から生成できるが,適切な再現画像を得るためには複雑な処理が必要であり,演算量の軽減が 課題となっていた.本稿では,はじめにRetinexアルゴリズムの改善とGPUを 利用したハードウェアの実装方法の双方を工夫することによって,高速化を目的とした画質改善システムを構築する.次に,構築したシステムに 対して主観評価実験を行い,従来提案されているMSRによる再現画像に匹敵する 画質が得られることを示す.その上で,提案システムの演算時間が大幅に 軽減されていることを示す.最後に,改善領域の表示方法と表示サイズに 対して主観評価実験を行い,実利用に向けた考察を行う.