抄録
色を忠実に再現する映像システムであるナチュラルビジョンと他のシステムとで生じる主観的な画質の差を引き起こす心理要因を探り,今後,評価を実施するための尺度を明らかにするために,SD法による主観評価実験を行った.評価実験時には,実物の参考という位置づけで評価画像の絵柄に対応した被写体を提示した.他のシステムとして,市販ディジタルカメラを模擬したシステム,彩度を下げたもの,彩度を上げたもの,疑似3バンドを採用した.評価結果を因子分析した結果,三つの因子『アピール感』『忠実感』『鮮鋭感』が抽出された.その中でナチュラルビジョンは『忠実感』において高い因子得点を示していることが確認でき,<『忠実感』がナチュラルビジョンを特徴づける因子であることがわかった.また,他システムとナチュラルビジョンとの心理要因の違いの概略が示され,今後忠実な色を再現する映像システムを開発するうえでの心理要因からの指針が得られた.