抄録
近年多数の動く錯視が紹介されている.実際には静止しているにもかかわらず動いていると勘違いしてしまう錯視である.これらの錯視の要因については議論されているものの未解明な部分が多い.本論文では仮想的な明度同化に基づく知覚映像を考慮することで,静止しているはずの動く錯視に対して本来計算できないオプティカルフローを計算する方法を提案する.このように計算された錯視フローを用いて,短期記憶映像中に張られた動く網を動かすことで,脳内で起きているなめらかな動き映像が生成できることを示す.実際に提案する視覚モデルを用いて蛇の回転や蛇クローバーなどの最適化型フレーザー・ウィルコックス錯視を見る時に,脳内で起きている動きをアニメーションとして生成できることを示すことで本モデルの有効性を示す.