抄録
濃淡画像を二値化し,対象領域と背景に分離する問題は,パターン認識の基本的な問題の一つである.従来,画像二値化手法ではしきい値による手法が多く利用されている.しきい値による手法では,濃度値や微分値のヒストグラムに現れる谷に注目してしきい値を定め二値化を行うが,ヒストグラムが双峰性をなすことを前提とした手法であり,結果は,画像の統計的性質に依存する.本論文では,任意の曲面が,その勾配に基づく流れの場をつくるという性質に基づき,曲面の凹凸構造をよく表すことのできる流線を定義する.この流線は,微分幾何学的性質より,極大点から流れ出て極小点へと流れ込む.そこでこの流線を画像の双極フローと呼ぶ.解析の結果,双極フローの変曲点の集合,すなわち零交差線が,その形状によって分類されることを示し,この分類に基づいて画像二値化を行う手法を提案する.