International Journal of Myeloma
Online ISSN : 2187-3143
REVIEW
多発性骨髄腫における新規治療標的としての特異的低酸素誘導性遺伝子同定への挑戦
池田 翔田川 博之
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2020 年 10 巻 1 号 p. 13-19

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抄録

多発性骨髄腫は難治性の形質細胞腫瘍であり,その治療法について多くの研究者が精力的に検討を進めてきた。新たな治療標的として,骨髄微小環境の様々な要素が考慮される。この中で低酸素応答は細胞の恒常性を保つための重要なプロセスであり,多発性骨髄腫を含むがん一般的に治療標的として検討されている。骨髄の酸素分圧は50~55 mmHgであるのに対し,低酸素ニッチは10 mmHg未満と想定されている。低酸素ニッチに適応する骨髄腫細胞は,低酸素誘導因子HIFを介した遺伝子発現変化を起こし治療抵抗性を獲得している。ただしHIFの阻害は正常細胞や組織への悪影響が懸念され臨床応用はいまだ困難であるため,その標的分子の機能解析が必要である。特に,低酸素応答が誘導する代謝経路の変化,播種,骨髄環境の悪性化などは有望な治療標的になりうる。今後,低酸素環境や低酸素誘導性遺伝子を標的とした治療薬の実用化が期待される。

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© 日本骨髄腫学会
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