2023 年 13 巻 4 号 p. 13-21
多発性骨髄腫は多様な遺伝学的変化を背景に発症・進展する。重要なドライバーイベントとして,転座などに伴うMYCの活性化や変異によるMAPK経路およびNF-κB経路の活性化,TP53の不活化などが挙げられる。近年のゲノム解析の進歩により,これら既知のイベントに加え,新たな遺伝子変異が同定され注目されている。DIS3変異は,KRAS,NRASに続く高頻度反復変異であることが明らかにされた。また,13番染色体長腕のヘテロ接合性消失により,約40%の症例でDIS3遺伝子の片アレルが欠失していることが判明した。これらの事実から,DIS3は多発性骨髄腫の病態に関与することが示唆されているが,その詳細はいまだ不明である。本稿では,DIS3の分子生物学的特性,多発性骨髄腫におけるDIS3変異/欠失の特徴やその意義について概説する。