抄録
〔目的及び方法〕当院集学治療病棟36床(ICU:6床,HCU:30床)で使用されている人工呼吸器6機種26台の保守管理は,臨床工学技士1名にて担当し,年間400〜450件の始業点検(同時に終業点検)を実施している.適切な保守管理を実施するため,人工呼吸器の保守管理システムを導入し,その有用性については第77回日本医科器械学会大会(2002.5.30,東京)にて報告した.また,人工呼吸器の呼吸回路(テスト肺含む)に起因するトラブルを防止するため,材料部の協力の下,管理方法(消毒,洗浄,乾燥,滅菌,保管等)の見直しを行い,新たに呼吸回路滅菌支援システムを導入した.今回,2002年1月〜11月までの11ヵ月間における人工呼吸器の始業点検および滅菌前後における呼吸回路の不具合などを調査し,本システムの有用性について検討した.〔結果および考察〕人工呼吸器の始業点検を実施した件数は433件であり,稼動時間は60,595時間であった.呼吸回路の滅菌件数は472件であり,滅菌前後における不具合は40件で,滅菌前29件(呼吸回路関係:13件,加温加湿器関係:1件,ネブライザ関係:2件,テスト肺関係:4件,洗浄不良:9件),滅菌後11件(呼吸回路関係:3件,加温加湿器関係:8件)であった.機器使用中における呼吸回路に起因するトラブル事例は2件(人的要因によるもの:2件,物的要因によるもの:O件)認められた.本システムは,(1)呼吸回路の構成部品の標準化,(2)構成部品の員数および不良部品のダブルチェック体制導入,(3)滅菌袋の見直しおよび滅菌シールの貼付け,(4)適切な滅菌方法の選択等の実施より構成される.本システムの導入により,機器使用中における呼吸回路に起因したトラブルの発生件数を減少することができた.本システムは,人工呼吸器の呼吸回路に関連した医療事故防止の観点からも有用なシステムであると考えられる.