医療と社会
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研究ノート
公衆衛生政策と人権
私権制限を伴う政策の正当性評価の基準と手続き
佐藤 元
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2005 年 15 巻 2 号 p. 2_63-2_78

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抄録

 公衆衛生政策は私的権利の制限(私権制限)を伴うことが多い。私権に関わる例としては,公衆衛生情報と個人のプライバシー,コミュニケーション政策と表現の自由,検疫・隔離や強制的入院と個人の自律や自由,安全衛生基準と経済活動の自由などの間に見られる対立が挙げられる。国家・自治体は公共の福祉のために私権を正当に制限し得るとされるが,公衆衛生領域における政府の責務と権限が拡大する中,人権保護に関する議論を整理し制度を整えることは重要な課題である。本稿は,現代の米国における議論を総括紹介し,今後の議論に資すことを目的とした。公衆衛生政策を人権保護の観点から検討する際には,正当性,合理性,経済的負担と効率,私権制限の程度,公平性,政策相互の整合性が系統的に評価されることが望ましい。また,こうした評価を制度化し実効性のあるものとするためには,正当な法的手続きと政治過程の透明性確保が重要と考えられる。前者は,実質的正当性と形式的正当性の両者からなる。

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© 2005 公益財団法人 医療科学研究所
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