【目的】
本研究では健常高齢者の「緑茶」に関与する嗅覚機能についての特徴を明らかにすることである。
【方法】
対象は,地域在住高齢者および若年者132名であり,Mini-Mental State Examination-Japaneseが27点以下の者,嗅覚機能低下を示す疾患の罹患者および薬物服用者,介護保険サービス利用者を除外した。方法は,カード型嗅覚同定検査(OE),「独自の日常においの自覚アンケート」のOEに関する12嗅素の自覚率を比較検討した。また,「緑茶」に関するOE項目(みかん,バラ,香水)を比較検討した。
【結果】
対象者を高齢者群66名,若年者群66名に分類し比較した結果,高齢者群の方がOE総得点,正答率において有意に低かった。一方,「独自の日常においの自覚アンケート」のOEに関する12嗅素の自覚率では,高齢者群の自覚が有意に高かった。「緑茶」に関するOEの項目では,高齢者群の方が「緑茶」の成分に類似したみかん(リナロール)とバラ(ゲラニオール)について,正解数と不正解数の乖離が大きく,年齢とOEの得点にて負の相関が示された。
【結論】
認知症予防の手立てとして「緑茶」を用いた介入が注目されており,本研究では,高齢者の「緑茶」に関する嗅覚機能の特徴を検討した。結果,高齢者群は,加齢による嗅覚機能の低下があり,「緑茶」の香りに関与するゲラニオール,リナロールの嗅覚が低下しているものの,その成分の自覚は高い特徴を示した。このため,嗅覚を刺激する介入で日本人に馴染みのある「緑茶」を用いることは,嗅覚機能の維持および改善効果の手段として期待できる。
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