医療と社会
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最新号
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巻頭言
産官学シンポジウム2025講演録
「日本の創薬の未来を考える」
開会挨拶・来賓挨拶
座長基調講
講演
パネルディスカッション
特別寄稿
  • 医薬品流通政策の基軸移動の視点から
    三村 優美子, 大崎 恒次
    2025 年35 巻3 号 p. 335-349
    発行日: 2025/10/20
    公開日: 2025/11/15
    ジャーナル フリー

    日本の医薬品流通は,2018年秋から顕在化したセファゾリン注射剤供給不足問題を1つの契機として,後発薬のサプライチェーンの分断と供給不足というこれまで経験したことのない新しい問題に直面している。そして医療現場の関係者の危機感を背景として,2020年3月から開始された「安定確保関係者会議」において,医療上重要な医薬品の中から特に供給確保に配慮が必要な医薬品を「安定確保医薬品」として選定し,サプライチェーンのリスクマネジメントの観点から,国が平時からのモニタリングと緊急時における安定供給確保措置を行うとの考えが示された。これは,国の経済安全保障政策の重要な柱であるサプライチェーン強靭化と同じ考え方である。さらに2020年春から発生した後発薬分野における供給不足騒動を受けて,後発薬分野の基盤強化に向けた総合的施策の実行のために,2025年5月,薬機法及び医療法が改正された。医薬品の安定供給が重要な柱となることで,従来の取引問題を中心としていた医薬品流通政策も大きく転換を始めている。

    医薬品取引問題は,流通改善ガイドラインの強化を通して徐々に整理されつつある。そして,サプライチェーン強靭化のためには,流通経路の簡素化,流通コストの透明化,流通取引改善,流通関係者間の信頼構築が不可欠である。その一方で,近年,医薬品卸と医療機関・薬局の間の取引に介在する「価格交渉代行業」の存在が目立つようになった。その代行業の事業の実態については,一部の業者を除き不明な点が多い。また医薬品卸の地域活動との間で様々な摩擦も報告されている。医薬品流通がより高度な次元に進むことが要請されているいま,この「価格交渉代行業」をめぐる問題をどのように捉えるべきか,代行業介在の理由とその活動実態を明らかにすることで,それが医薬品流通に与える影響,そして取引改善の方向との関連について検討したい。

研究論文
  • 東京都狛江市のオープンデータを用いた横断解析
    森島 遼, 山邊 聖士
    2025 年35 巻3 号 p. 351-366
    発行日: 2025/10/20
    公開日: 2025/11/15
    [早期公開] 公開日: 2025/09/05
    ジャーナル フリー

    近年,支援サービス体制の在り方にサービス利用者の声を反映させる動きが広がっている。援助希求行動を促進する環境について知見はあるものの,困っているにもかかわらず助けを求めていない人(非援助希求行動)のニーズについて調べた研究はない。本研究は,非援助希求行動状態にある若者が支援サービス体制に対して望む環境に関して検証した。

    東京都狛江市による18~39歳の住民への調査のオープンデータより206名分の回答を分析対象とした。悩み事と援助希求行動の有無より非困難群(50名),援助希求行動群(91名),非援助希求行動群(64名)に分類し,社会人口統計学的要因や生活満足度をカイ二乗検定やt検定により比較した。またロジスティック回帰分析により各群における援助を求めやすい対象や手段の回答傾向を検証した。

    非援助希求行動群の2~3人に1人から,匿名性が高いこと,相談相手が相談内容を受け入れてくれやすい特徴を有すること,相談機関へアクセスしやすいことなどが援助を求めやすい対象や手段として報告された。しかし他群よりもこれらの回答割合が低いことに加え,生活満足度が低く,経済的な悩みが多く報告された。非援助希求行動群の大半は,相談先がわからないなどの理由で援助希求に至っていないことが観察された。

    非援助希求行動状態にある若者は,自身のニーズを表出できない状況にあることが示唆された。SNSなどを通じた遠隔相談体制の拡充や,経済的困難やヘルスリテラシーの差による不均衡に配慮した支援体制作りをしていくことは,非援助希求行動状態にある若者が相談しやすい環境作りのために重要かもしれない。

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