医療と社会
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特集論文
医療機関における医療安全への取組状況
「患者安全推進年」から1年後の状況
池田 俊也小林 美亜
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2006 年 16 巻 1 号 p. 5-16

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抄録
 厚生労働省は,2001年を「患者安全推進年」と位置付け,毎年11月25日を含む1週間を「医療安全推進週間」と定めて医療安全に関する意識向上をはかることとした。また,医療安全に関する基本的な考え方を取りまとめた「安全な医療を提供するための10の要点」(以下,「10の要点」と略)を公表するとともに,この標語をもとにそれぞれの医療機関においてその特性などに応じた独自の標語が作成できるよう,各標語に解説と具体的な活用方法を記載したパンフレットを作成した。しかしその普及状況については明らかでなかった。そこで筆者らは,2002年9月の時点における,「医療安全推進週間」ならびに「10の要点」の認知度,独自の標語の作成状況などについて,全国の医療機関に対してアンケート調査を行った。
 調査対象は,大学病院本院80施設,国立がんセンター,国立循環器病センター,その他の病院918施設,有床診療所594施設とし,自記入式調査票を用いて,2段階に分けて実施した。第一次調査票の回収数は428通,第二次調査票の回収数は118通であった。
 医療安全推進週間の存在を知っていた医療機関は約半数のみであった。また,「10の要点」の内容をよく知っているとの回答は約3分の1であり,医療機関における認知度は高くない状況であった。独自の標語を策定した医療機関も約3割に留まっていた。しかし,今回の調査において,安全管理に対する意識の高い医療機関から様々な取組みが報告されており,有益で他施設へも適用可能な活動が数多く含まれていた。これらの知見を参考にしながら,各施設においてより安全な医療を提供できる安全文化が醸成されることが望まれる。
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© 2006 公益財団法人 医療科学研究所
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