医療と社会
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特集:ヘルスケアにおける連携(I)
高齢者向け長期ケアの地域マネジメントに関する研究
―ブループリント手法を利用した日本の3事例の比較より―
河口 洋行
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2013 年 22 巻 4 号 p. 309-328

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抄録

本研究の目的は,急速に高齢化が進展する都市部での,高齢者向け長期ケアを地域単位でマネジメントする方式を検討することである。このために,公的介護保険の給付サービスを前提として,医師会が主導する広島県尾道市・保険者が主導する埼玉県和光市・居宅事業者が主導する新潟県長岡市の3つの事例を取上げ,公的介護保険制度の標準的な手続きをベースケースとして比較した。分析手法としてはサービス・マネジメント分野のブループリント手法(service blueprint)を採用した。
分析の結果,第一の「尾道市医師会方式」は,在宅医療機能が中心となっており,プライマリーケアから看取りまでを地域で切れ目なく供給する方式であった。第二の「和光市保険者方式」は,介護予防や重症化防止機能が中心で,自治体が行う供給体制の計画的整備との整合性が取られれば,非常に効率的な方式であると考えられる。第三の「長岡市居宅方式」は,同一事業者がケアマネジャーと多職種チームを地域毎に配置し,サービス利用者の情報共有やチーム内のチームワークを高める方式である。結論としては,都市部を想定した場合,効率的な地域マネジメント・システムとして,和光市保険者方式をベースとすることが考えられる。但し,重篤なケースや看取りの場合には別途医療専門職を中心に検討する組織を設けるなどの変更が必要と考えられる。

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© 2013 公益財団法人 医療科学研究所
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