医療と社会
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財団研究論文
生活保護受給者自立支援事業における行政と民間との連携
―今後の地域精神保健アウトリーチ支援に必要な技術に関する検討―
廣川 聖子大山 早紀子大島 巌角田 秋添田 雅宏村嶋 幸代萱間 真美
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2013 年 22 巻 4 号 p. 343-357

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抄録

本研究では、地域医療における精神科未治療・治療中断者等,治療関係の確立が困難な対象への訪問支援について,市町村が行う生活保護受給者への健康管理支援事業における支援内容の分析から今後の訪問支援に期待される社会的役割・機能およびそれに対応した今後の専門職への教育のあり方を検討することを目的とした。
事業の支援対象のうちメンタルヘルス上の問題を有する被保護世帯への訪問支援を実施している看護師,精神保健福祉士,また事業担当責任者に支援内容に関するインタビュー調査を行い,質的な分析を行った。
支援員の主たる役割として,看護師は「健康管理」が,精神保健福祉士は「ケアマネジメント」が特に期待されていたが、訪問支援をより効果的に機能させるためには単一職種ではなく多職種チームによる包括的支援体制の整備が必要であった。支援対象者は自らは支援を求めておらず,支援・治療関係の構築が困難であり,支援員はまず支援開始前の関係構築のプロセスに十分な時間を必要としていた。今後,民間による訪問支援サービスを発展させていくために,支援者には関係構築,家族アセスメント,ケアマネジメント,多職種コーディネート各スキルの向上が必要であり,専門職教育においてもこれらの点について学習する機会をもつことが必要であると考えられた。

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© 2013 公益財団法人 医療科学研究所
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