医療と社会
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研究論文
「トクホ・ラベル」への支払意思額の推計
健康食品の表示制度のあり方を考える
山重 慎二田中 康就阿部 道和
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2015 年 25 巻 3 号 p. 305-319

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抄録

健康の保持・増進効果のある健康食品は,その効果に関して許可される表示内容によって,購入行動が変化すると考えられる。現在の表示制度の望ましさを考えるために,インターネットでのアンケート調査を行い,特定保健用食品の「トクホ・ラベル」の表示内容を変化させた時の支払意思額の変化を,コンジョイント分析によって検証した。個別商品の審査に基づいて健康増進効果があることを示す「個別商品型」のラベルに対して,消費者は高い支払意思額を示した。これに対して,健康に良い効果がある成分を含むことだけを示す「成分表示型」のラベルに対する支払意思額は低下したが,健康への関心が高いと思われる人に関しては有意にプラスであった。予防・改善効果があると考えられる病名をラベルに記載した「病名表示型」にすると,ラベルに表示される病気の経験がある者の支払意思額を大きく引き上げる効果が発生した。この効果は,期待される健康増進効果が,ラベルで示された病気に良い効果を持つことを知っている人にも生まれた。現在の許可制度では,健康食品のラベルに病名を記載することに厳しい制限があるが,科学的根拠が存在する場合には,それを積極的に認めていくことで,国民の健康が改善する可能性があることが示唆された。

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© 2015 公益財団法人 医療科学研究所
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