医療と社会
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研究ノート
OECDにおける診療報酬制度が医療支出と医療の質に与える影響の評価
中田 達大楊 珏馬奈木 俊介
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2016 年 26 巻 2 号 p. 179-196

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抄録

医療システムの持続可能性について考える際,いかに医療支出を抑えながら医療の質を維持・向上していくかが重要である。診療報酬制度は医師へインセンティブを与えるため,医療の質と医療支出に影響を及ぼす重要な医療政策と認識されている。

本研究は1990年から2013年のOECD34カ国のパネルデータを用いて,報酬制度が医療の質と医療支出に与える影響について定量的に検討する。さらに,それらの影響が国の所得レベルに応じて,いかに変化するか考察する。対象はプライマリ・ケアの出来高払い制度,人頭払い制度,給与制度であり,変量効果モデルを用いた。分析結果から分かったことは以下の3点である。

1)所得レベルの向上に伴い,医療の質に関しては,出来高払い制度が最も大きな効果を得られる制度である。さらに,報酬制度が総医療支出に及ぼす影響に有意な差がない結果から,医療の質(指標として潜在喪失人年を用いた)と支出面の観点からの評価では,出来高払い制度が他の制度よりも優れている可能性がある。

2)報酬制度は患者負担と公的機関負担の医療支出の両方に有意な影響を与え,公的医療支出への影響が所得レベルの向上に伴ってより強まる。

3)所得レベルが向上した時に,患者負担と公的機関負担の医療支出を増加させる効果は出来高払い制度が最も大きい。その理由として,医療技術の向上が与える影響について議論した。

以上の結果は,今後の報酬制度のあり方に関する議論に重要な示唆を与え得る。

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© 2016 公益財団法人 医療科学研究所
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