医療と社会
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〈特集〉子どもをめぐる諸課題を考える―少子化問題を中心に―
保育問題解決に向けての複合的な政策アプローチの必要性
前田 正子
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2017 年 27 巻 1 号 p. 77-88

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抄録

人口減少時代に入り,労働力確保のために一億総活躍の掛け声の下,女性の労働力への期待が高まっている。出産前後の女性の就業継続率も少しずつ上がってきている。

これまで専業主婦比率が高かった都市部で,既婚女性の就業率が上がりはじめ,保育所の利用者が増えだし,「保活」という言葉が生まれるほど,都市部では保育所への入所が厳しさを増している。保育ニーズの増加に保育所の供給増が追いつかない状況である。さらに首都圏への人口集中が加速化しており,特に東京23区では子どもの人口増と共に保育所入所希望比率があがっている。だが,一方では地方の保育所は少子化で閉鎖され,さらに保育所の年齢別定員の構造的な偏りもあり,保育所の定員割れの状況も広がっている。また保育士不足も深刻化しており,その解決には給与増だけでなく,保育士のワーク&ライフバランスや,研修体制の構築,キャリアパスの確立など様々な工夫が求められる。待機児童対策のために育児休業の2年間への延長も決められたが,育児休業長期化の負の側面を忘れてはならない。しかし,一方で保育資源が無限にあるわけではなく,0歳児保育と育児休業制度の関係も整理されるべきである。いずれにしてもすべての保育問題を保育所だけで解決できるわけではなく,親の働き方や仕事や企業の地方分散など,より包括的な政策パッケージがより良い保育環境の整備のために必要だと思われる。

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