約3,000人の北海道寿都町は多大な財政負担を抱えた道立寿都病院を町立寿都診療所に移管し,家庭医,総合診療医を中心とする地域医療を展開している。その際,北海道家庭医療学センターと業務契約を行い,医師複数名に変更し,家庭医,総合診療医を中心とした包括的かつ継続的な家庭医療の実践,地域やコミュニティを対象とした様々な取り組みを行ってきた。
結果として移管前は年間4~5億円であった赤字が,現在の寿都診療所においては1億円へ圧縮され,町の実質負担が3千万円弱となっている。国保被保険者中の町内医療機関受診率が2005(平成17)年度46.5%から2016(平成28)年度58.8%と年間約1%ずつ増加し続けている。休日時間外受診患者数が2005(平成17)1,011人から2016(平成28)年度772人へ,救急車搬入数が2005(平成17)169件から2016(平成28)年度76台へと減少した。
これらは家庭医療,総合診療により住民と医療機関との信頼関係が構築されてきた結果と考えられる。家庭医,総合診療医の増員,ならびに循環型地域医療モデルの拡充により持続可能な地域医療達成の可能性がある。それらの取り組みを支えていくために総合診療専門医制度を定着,発展させていくこと,さらには政策的な後押しも重要である。