医療と社会
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地域包括ケアシステムの構築-総合診療専門医に期待される役割-
地域で活躍する「かかりつけ薬剤師」の養成
松下 綾
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2019 年 29 巻 1 号 p. 107-118

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抄録

少子高齢化が進み,医療需要の増大やそれに伴う医師不足が顕著化する我が国では,多職種が協働する医療で地域医療を支えることが求められている。最近では,個々の医療従事者の業務負担を最適化しつつ,医療の質を確保する方法の一つとして,これまでのチーム医療を発展させる形でタスクシフティング(業務の移管)/タスクシェアリング(業務の共同化)を有効活用すべきという考え方が広まってきている。このような状況の中,地域の薬剤師は住民から症状を聞き適切な対応を提案できること,処方箋に基づく調剤をした際に,必要に応じて患者の体調変化などの情報を収集し,医師に情報提供することなどで,地域包括ケアに加わることが新たな役割の一つとして求められている。

これを実現するには地域の住民から症状を訴えられた時に病歴情報を収集するスキルが薬剤師にも必要と考えられるが,薬剤師にはこのスキルが不足していると指摘されている。

そこで我々は,薬剤師向けの臨床推論,行動変容,コミュニケーション技法などの教育プログラムの開発と検証を行った。また,薬剤師が現場で患者から病歴聴取情報を収集することを支援するために,医師と薬剤師の協働の下,病歴情報の収集を補助するツールの開発を行った。

これらを通して,地域包括ケアにおいて,医薬品に限らず健康問題全般のサポート機能を発揮できる「かかりつけ薬剤師」の養成に取り組んでいる。

今後も医療需要は増大すると見込まれており,このような状況の中で地域医療を維持していくには従来の医薬の職域を超えた連携業務を担うことができる「かかりつけ薬剤師」が必須であると考えている。

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© 2019 公益財団法人 医療科学研究所
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