医療と社会
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研究論文
コーホート及び診療行為に着目した年齢調整後医療費の地域差分析
松多 秀一
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2020 年 29 巻 4 号 p. 511-525

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抄録

本研究では,医療費の地域差分析ではこれまで利用がまれな手法とデータを用いて,年齢調整後一人当たり医療費の都道府県別の差の要因分析を行った。

第一に,5歳刻みの同一生年コーホートに着目し,国勢調査のタイミングと一致する2010年度から2015年度までの5年間の医療費の変化幅について検証した。ほぼすべてのコーホートで地域差は拡大していたが,若年と老年では特定の異なる都道府県で大幅な増加が起きておりコーホート間で一様ではなかった。医療費の変化を,所得や医療供給体制などの共通要因と特定健康診査受診率などのコーホート別要因に回帰させたところ,老年の4つのコーホート(2015年度時点で70-89歳)では医師数の変化が正で有意であり,中年の3つのコーホート(同40-54歳)では医療機器台数(MRI台数)の変化が正で有意,他1コーホートで負で有意であった。これは,都道府県全体の年齢調整後医療費関数の結果と整合的であった。

第二に,上記の分析を補完するため,性・年齢調整標準化レセプト出現比と年齢調整後医療費の相関関係を2015年度の入院外についてクロスセクションで分析した。診療行為の大区分別にみると,在宅医療,検査,投薬,処置等で医療費との関係が強い項目が多かった。医療の需要側の能動的な行為の影響が強いと想定される初診及び関連の診療行為の方が,再診及び関連の診療行為に比べて医療費と正の相関が高く,医療供給体制との関係も強かった。

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© 2020 公益財団法人 医療科学研究所
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