論文ID: 2022.003
30代,40代という比較的若い年齢層の介護者が,近年,増加している。一方,仕事や家庭生活において,人生の多くの岐路に立たされる大事な時期も,まさに30代,40代である。こうした若年期・壮年期の介護発生は,介護者本人のキャリア形成や,結婚行動に不利な影響を及ぼす可能性がある。本稿は,こうした懸念が現実に起きているかどうかを検証すべく,自分の父母・祖父母の介護経験を持つ男女の調査データを用いて,30代,40代の介護発生と,50代時点での就業収入や結婚確率との関連性について調べた。
多変量解析の結果,女性における若年期・壮年期の介護発生は,結婚確率を低下(結婚難化)させることが確認された。具体的には,40代で介護者となった女性の結婚確率は,それ以外の女性に比べて10.7%ポイント低く,30代で介護者となった女性に至っては26.3%ポイントも低くなる。一方で,男性の介護者は,壮年期の介護発生が50代時点での年収低下につながっている。すなわち,壮年期(40代)に介護を開始した男性の就業年収は,それ以外の男性に比べて40万円低く,介護が壮年期男性のキャリア形成に不利な影響を与えた可能性が高い。