医療と社会
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迫られる構造改革,縮小する戦略オプション
中川 洋
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2000 年 10 巻 1 号 p. 57-71

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抄録
過去15年間に不断の集中合併を繰り返した結果,少数の大規模企業に市場シェアが集中し,多くの企業が欧米両市場を中心に国際的事業基盤を確立した欧米企業に対し,わが国ではごく一部の企業を例外とし,その事業の殆どを日本国内市場へ依存した多数の中堅企業という構造に基本的変化が見られていない。その結果,欧米企業と日本企業の規模格差は極端に拡大した。この格差をもたらした最大の要因は,間接金融システムを基本とした日本独自の経営の在り方と,日本医薬市場の事業リスクが独自の薬価制度,新薬承認プロセスなどによって,欧米市場のそれを大きく下回っていたことの複合的要因によっていたと考えられる。しかしながら,医薬品市場の独自性は急速に失われっつあり,国際市場との同質性が高まった結果,事業リスクは大きく拡大,一方,金融システムも急速に直接金融主体へと変化,資本市場の評価が直接的な資本コストの決定要因として機能し始めた。それぞれの企業の規模と,置かれた環境に応じた現実的戦略設定と実行が急がれる。何もしないことのリスクはかつてなく高まっており,かっ,時間の経過とともに残された戦略オプションはますます小さくなることは明らかと思われる。
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