医療と社会
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日本の医療機関の組織と行動
大森 正博
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1995 年 5 巻 1 号 p. 119-159

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抄録

本稿の目的は,医療サービスのもつ情報の性質が医療サービス市場にもたらす問題を明らかにし,実際に医療サービスが供給される個々の医師のレベル,病院という組織のレベルでどのように規制することができるかについて検討し,さらにこれらの検討を具体的に日本の医療機関にあてはめることである。
医療サービスは,その内容について,医師をはじめとする生産者が消費者よりも圧倒的に多くの情報を持っていることによって特徴づけられる。その結果,医師のMoral Hazard,患者が病気になったときに最初に適切な医師を訪問することができない,患者の訪ね歩き等の問題が生じる。最初に, こうした問題を解決する規制の方法および実施する上での問題について全般的に検討する。次に,同じ問題を病院という組織のレベルで考える。病院という組織の中では,医師,看護婦等の間で分業が行われ,診療に関わる情報が各主体間に分散し,様々なインセンティブの問題が生じる。病院という組織の中で診療部門・事務部門がどのような機能を果たすのかを考え,その機能を発揮するために必要な情報はどのようなものか,またこの両部門間でどのようなコンフリクトが生じるか,について検討し,次に効率的な診療方法の採用,医療保険の選択および最初の医師の訪問の適切性の問題を解決する規制の方法について考える。
これらの理論的考察をふまえて,日本の医療機関の設立制度について批判的に検討し,現在の制度では情報に関わる問題を解決することが困難であるかあるいは大きな費用がかかることを指摘し,新たな施策について若干の提言を行う。

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