医療と社会
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医療・福祉における営利性と非営利性
民間非営利組織とサービスの質
遠藤 久夫
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1995 年 5 巻 1 号 p. 27-42

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抄録

医療や福祉サービスの担い手として民間非営利組織の役割が大きい。しかし,民間非営利組織の定義や営利企業とのパフォーマンスの違いなどが,必ずしも明確にされているわけではない。本稿では,欧米を中心に行われている非営利組織の経済学的分析を参考に以下の考察をおこなった。
1)民間非営利組織の行動を営利組織の行動とことなるものにする制度的特徴として,オーナーの不在と利益分配の禁止を取り上げ,その理由を検討した。2)これらの特徴によって利潤追求から解放された非営利組織は,(1)社会ニーズから乖離して効率性を低下させる可能性があるが,同時に(2)機会主義的行動を抑制することにより供給する財・サービスの質に対する消費者の信頼を高め,消費のモニタリング・コストの低下を通じて取引効率を向上させるという二面性があることを考察した。3)わが国の非営利組織を分析する上で参考になると思われる,(1)営利と非営利のナーシングホーム入所者の属性を分析して入所者は施設の選択において非営利性をサービスの高品質のシグナルとしていることを実証したHoltman and Ullmannの研究,および,(2)長期ケア施設において非営利組織は営利組織より質の高いサービスを提供していることを実証したWeisbrodの研究をサーベイした。

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