医療と社会
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医療の質を高めるために
紀伊國 献三
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1996 年 5 巻 4 号 p. 1-12

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抄録

平成7年度版厚生白書は医療を特集とし,同時に一般市民2,000人に対するアンケート調査を行った。その時,現在の医療に関する満足度調査では「満足」の割合は約50%,「やや不満」19%,「非常に不満」3%とされた。
この満足度を上げることは医療提供者として当然の責務である。医療担当者は,まず技術水準を高めることにより医療の質を高める努力を行う。そのためには客観的な質の評価が必要であり,これについては「構造的」「過程的」「成果的」な評価が行われてきた。いわゆる第3者機能評価の考えである。と同時に,これら技術水準の高さによる医療の質は利用者の満足に直結するものではない。高い質の技術がどのように利用者に提供されたかが利用者の満足の高さをもたらすものである。注意しなければならないことは,提供者と利用者の間で高い質の医療について共通の理解点を求め,それが個々の医療の提供にあたって達成されていたかどうかの検討が必要である。
アメリカ,イギリス,カナダでの検討によれば,たとえ総合的満足度は高くても,個々の行為については問題点が多くあることが指摘されている。共通の理解点について個々的な医療の提供にあたっての問題発見,およびその解決が組織的に行われなければ医療の質は高められない。また,医療の質の向上に努力する姿勢を社会はサポートしなければならない。

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