医療と社会
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医薬品卸売業の構造変化と再編成過程
1980年代以降の関東地域医薬品卸の提携・合併を中心として
三村 優美子
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1998 年 8 巻 2 号 p. 1-45

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抄録

日本の医薬品卸売業は, これまで頻繁な提携・合併を繰り返しながら成長し規模拡大を進めてきた.特に近年では大規模な合併が相次いでおり, 日本の流通業全体の中でもその再編成の激しさは際立っている.また, 同じ提携や合併の動きであっても, 1970年代以前と1980年代以降ではかなり性格が異なっているように思われる.公的医療保険制度の枠組みと有力製薬メーカーの系列を背景として本来安定的と考えられる医薬品卸であったが, そのことが逆に卸機能を限定させ, 経営の不安定さに結びついているように思われる.激しい再編成は, 直接的には薬価基準の引下げに刺激されたものであるが, 間接的には,メーカーの価格政策や公的制度変更に過度に左右されやすい医薬品卸の経営特性によるものといえる.それは, 規模にかかわらず同質的という日本の卸売経営全体に共通する特性でもある.当論文では, 特に関東地域を中心として医薬品卸の再編成過程を整理・分析しているが, そこでは再編成の進展に伴う有力広域卸, 広域卸, 地域卸の地域的な勢力関係の変化を明らかにみることができる.ただし卸売業の経営戦略も, 経営規模と営業地域拡大の方向だけでなく, 地域市場への浸透という従来とは異質な方向が目指されるようになっており, 規模だけではなく専門性など多様な機能を発揮する卸売業のタイプ分化の可能性も生まれている.

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