日本統合医療学会誌
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報告
首尾一貫感覚(SOC)と食事に対する意識との関連―健康チェック参加者の質問調査より―
内田 誠也柴 維彦田中 英明
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2021 年 14 巻 2 号 p. 141-149

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抄録

背 景:Antonovskyは「健康生成論」を提唱し、健康要因として首尾一貫感覚(SOC)が重要であると論じている。近年のストレスフルな社会環境下で、SOCの強化に食事や運動などのライフスタイルが関連していると報告されている。本研究では、SOCが高い人は、食事は単に栄養を取るだけとは考えず、食と心身の健康との繋がり、及ぼす影響について理解できるため、無農薬や無化学肥料の食材を選び、食べ物と作る人に感謝して、食を楽しむことができるのではないかという仮説を立てた。

目 的:SOCと食事に対する意識との関連を調べること。

方 法:都内にある統合医療認定施設内において行われている健康チェックに訪れた人に対して研究参加を募集した。検査項目はSOC調査票(5検法)、自覚ストレス調査票(JPSS)、チャレンジシート(食事・運動・休養得点)、食事に対する意識に関する質問(食意識得点)、美術文化活動の頻度(美術文化得点)であった。

解 析:①Mann-WhitneyのU検定を用いて、チャレンジシートの項目ごとにSOC、JPSSを分析した。②SOC、JPSS、各アンケート得点のSpearman相関を分析した。③目的変量をSOC、JPSSとして、説明変量を各アンケート得点および年齢として重回帰分析を行った。

結 果:研究協力者は男性44名、平均年齢は52.9歳(SD11.5)であり、女性57名、平均年齢は50.7歳(SD14.3)であった。Spearman相関係数では、SOCは休養習慣、食意識、運動習慣などと弱い正の相関を示し、JPSSと強い正の相関を示した。重回帰分析では、休養習慣と食意識がSOCに正の影響を、JPSSに負の影響を与えていた。

考 察:食材による影響より、食に対する新鮮なもの、旬のもの、地元のもの、自然農法のものを進んで選んで食べる価値観や、感謝の意識、食を楽しむ意識がSOCと関連性が高いことが示唆された。

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