日本統合医療学会誌
Online ISSN : 2436-2158
Print ISSN : 2435-5372
14 巻, 2 号
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巻頭言
総説
  • 吉田 紀子
    2021 年14 巻2 号 p. 85-97
    発行日: 2021/11/30
    公開日: 2022/11/30
    ジャーナル フリー

    近年、世界一の高齢先進国であるわが国においては超高齢少子社会の克服モデルが求められている。

    鹿児島県奄美群島は豊かな自然と共生し、長寿者が多く、子どもが多く産まれ育っているが、群島内に就業の場が少なく若年層の島外流出による人口減少が進行している。そこで鹿児島県では長寿・子宝の要因を分析し、一層の長寿・子宝に活かすとともに、要因資源を地場産業化、観光産業化し、定住人口を増やし持続的長寿・子宝に資するという戦略の下に超高齢少子社会克服モデルの構築・推進に取り組んだ。

    その結果、長寿・子宝の要因活用の地場産業・観光産業や住民活動が増え、10年、15年後の長寿・子宝指標も高水準を維持し、2021年度には世界自然遺産登録もなされた。自然と共生した超高齢少子社会克服モデルとして多くの示唆が得られたので報告する。

  • 蒲原 聖可
    2021 年14 巻2 号 p. 98-113
    発行日: 2021/11/30
    公開日: 2022/11/30
    ジャーナル フリー

    SARS-CoV-2を原因とする新型コロナウイルス感染症(COVID-19)がパンデミック(世界的大流行)となり、社会経済活動に大きな影響を与えている。COVID-19対策として、ウイルスへの曝露機会を減らす予防策が実践されており、ワクチン接種による一定の効果も認められている。一方、すでに感染が世界規模で拡大したこと、不顕性感染となることなどを考えると、COVID-19の根絶や封じ込めは困難である。したがって、宿主であるヒトの側でのウイルス感染への抵抗性を高める対策も重要である。

    機能性食品成分では、抗ウイルス作用や免疫賦活作用、抗炎症作用などの働きが知られている。すでに、これらの成分では、COVID-19の感染罹患リスクや重症化リスクとの相関が見いだされている。また、一部の食品成分では、治療における有用性も示唆された。現時点のエビデンスを俯瞰するとき、機能性食品成分を含有する食事の摂取やサプリメントの利用を介して、生体防御機構を維持することが、COVID-19対策として重要である。

    ワクチン接種による集団免疫獲得等により、COVID-19のパンデミックは収束に向かうことが期待される一方、感染力が強い変異株への懸念が続いている。さらに、新興感染症の周期的・局地的な流行は、今後も継続すると考えられる。したがって、新興感染症対策として、機能性食品成分の利活用が考慮されるべきである。

    本稿では、COVID-19対策としての機能性食品成分のエビデンスを概説した。

原著
  • 鍋田 智之, 辻丸 泰永, 堀川 奈央, 脇 英彦
    2021 年14 巻2 号 p. 114-121
    発行日: 2021/11/30
    公開日: 2022/11/30
    ジャーナル フリー

    目 的:上顎最後臼歯後方の歯肉で疼痛閾値が低下している部位にシリコンで形成された微細突起を用いて軽度の侵害刺激を与え、僧帽筋の筋硬度および自覚的肩こりの改善が認められるかを検証した。

    方 法:安静と介入の順序を入れ替えたランダム化クロスオーバー試験を実施した。肩こりを自覚している健康成人26名を対象とした。介入はシリコンで成型された直径5mmの円形台座に0.08mmの先端を100個密集させた器具(ソマニキスオーラル)を用いた。左右の上顎最後臼歯後方の歯肉で侵害閾値が低下している部位に1Hzの頻度で60回の摩擦刺激を行った。僧帽筋の筋硬度を超音波エラストグラフィ法(Shear Wave Elastography:SWE)にて測定した。肩こり感はVisual Analogue Scale(VAS)にて記録した。

    結 果:介入後に僧帽筋の筋硬度は有意に低下した。安静・介入前後の筋硬度の変化量を比較した結果、介入で有意に低下した。肩こりのVASは安静・介入ともに有意に低下したが、その変化量と筋硬度の変化との相関は認められなかった。

    結 語:歯肉に対して軽度の侵害刺激を与えることによって、僧帽筋の筋硬度が低下する可能性が考えられた。筋硬度の低下が肩こりの改善と関連するかは明らかにならなかった。

  • 田中 英明, 木村 友昭, 内田 誠也, 鈴木 清志
    2021 年14 巻2 号 p. 122-131
    発行日: 2021/11/30
    公開日: 2022/11/30
    ジャーナル フリー

    本研究では、医療従事者のスピリチュアリティやスピリチュアルケアに対する考えを、東洋と西洋、そして医師とその他の医療従事者の間で比較検討した。日本統合医療学会の国際委員会が電子アンケートによる調査を実施し、14ヶ国の医療従事者のデータを収集し、東洋と西洋に分類したうえで分析を行った。治療過程におけるスピリチュアリティ・宗教の重要性の認識を比較した後、テキスト分析を行い、1)スピリチュアルケアについての考え、2)従来の医療に伝統医療・宗教の精神性を取り入れる際の課題、に関する意見の解析を行った。

    その結果、女性が半数以上(54.5%)、医師が半数近く(47.3%)の332名の参加者のうち、西洋のグループは「治療の過程でスピリチュアリティ・宗教が重要である」 と回答する割合が有意に高かった。参加者は、スピリチュアリティ・宗教を重要視する一方で、医療現場における実施に向けて多くの課題の存在を認識していた。

報告
  • 堀越 香, 岡 美智代
    2021 年14 巻2 号 p. 132-140
    発行日: 2021/11/30
    公開日: 2022/11/30
    ジャーナル フリー

    目 的:身体的・精神的・社会的・スピリチュアルな健康の4側面を目指すヨーガの主観的評価を検討するために、ヨーガの研究で使用されている主観的評価尺度と、4側面の尺度について文献的に明らかにする。

    方 法:医中誌Web・J-STAGE・CiNiiを検索し、ヨーガに関する和文の文献から主観的評価尺度を抽出し同一尺度別に分類した。さらに、身体的・精神的・社会的・スピリチュアルの4側面別に尺度を分類した。

    結 果:分析対象27文献から47種類の主観的評価尺度が抽出され、4側面別では、身体的13種類、精神的38種類、社会的12種類、スピリチュアルで1種類の尺度の使用が明らかになった。

    結 論:ヨーガの研究(和文文献)で用いられている主観的評価尺度の多くは信頼性・妥当性が検証されていた。4側面別では、スピリチュアルな側面は主観的尺度でさらに評価する必要がある。また、ヨーガ向けスピリチュアリティ尺度の開発が望まれる。

  • 内田 誠也, 柴 維彦, 田中 英明
    2021 年14 巻2 号 p. 141-149
    発行日: 2021/11/30
    公開日: 2022/11/30
    ジャーナル フリー

    背 景:Antonovskyは「健康生成論」を提唱し、健康要因として首尾一貫感覚(SOC)が重要であると論じている。近年のストレスフルな社会環境下で、SOCの強化に食事や運動などのライフスタイルが関連していると報告されている。本研究では、SOCが高い人は、食事は単に栄養を取るだけとは考えず、食と心身の健康との繋がり、及ぼす影響について理解できるため、無農薬や無化学肥料の食材を選び、食べ物と作る人に感謝して、食を楽しむことができるのではないかという仮説を立てた。

    目 的:SOCと食事に対する意識との関連を調べること。

    方 法:都内にある統合医療認定施設内において行われている健康チェックに訪れた人に対して研究参加を募集した。検査項目はSOC調査票(5検法)、自覚ストレス調査票(JPSS)、チャレンジシート(食事・運動・休養得点)、食事に対する意識に関する質問(食意識得点)、美術文化活動の頻度(美術文化得点)であった。

    解 析:①Mann-WhitneyのU検定を用いて、チャレンジシートの項目ごとにSOC、JPSSを分析した。②SOC、JPSS、各アンケート得点のSpearman相関を分析した。③目的変量をSOC、JPSSとして、説明変量を各アンケート得点および年齢として重回帰分析を行った。

    結 果:研究協力者は男性44名、平均年齢は52.9歳(SD11.5)であり、女性57名、平均年齢は50.7歳(SD14.3)であった。Spearman相関係数では、SOCは休養習慣、食意識、運動習慣などと弱い正の相関を示し、JPSSと強い正の相関を示した。重回帰分析では、休養習慣と食意識がSOCに正の影響を、JPSSに負の影響を与えていた。

    考 察:食材による影響より、食に対する新鮮なもの、旬のもの、地元のもの、自然農法のものを進んで選んで食べる価値観や、感謝の意識、食を楽しむ意識がSOCと関連性が高いことが示唆された。

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