2011 年 43 巻 p. 66-54
金沢大学の前身、旧制第四高等学校の旅行部(現在で言うところの山岳部ないしワンダーフオーゲル部)は、一八九八(明治三一)年に創設され、日本の山岳団体として最古の歴史を誇る。大正年間に多く設立され日本登山界をリードすることになる大学・旧制高校等の学校山岳部の中で、パイオニア的存在である。また四高の存在した石川県金沢市の地方的特色と部関係者の個性とにより、従来の日本近代登山史に収まりきらないユニークな要素を含み持ち、日本近代文化史の貴重な一コマを見せている。部機関誌『BERG=HER (ベルグハイル)』全十三号を検討することで、その活動と思想に迫り、日本近代文化史研究に資することとする。今回はその準備段階として、『BERG=HER』の書誌について確認するとともに、四高旅行部沿革の通説について考察と訂正を加える。