2024 年 23 巻 p. 1-33
2020年、韓国は、個人情報保護法を改正し、日本の個人情報保護法における「仮名加工情報」とも類似する「仮名情報」の規律を導入した。この改正に対し、複数の市民団体等から、「個人情報自己決定権」を侵害するとして違憲性の確認を求める憲法訴願が提起された。2021年、憲法裁判所憲法裁判研究院は、違憲の可能性を示唆する報告書を公表したが、2023年10月、憲法裁判所はこれらの訴願を棄却し、改正の合憲性を支持する決定を下した。
本稿では、韓国法における「個人情報自己決定権」の捉え方と、それが「仮名情報」の規律とどのように矛盾するのかを、憲法裁判研究院の報告書で提起された問題点に焦点を当てて検討し、憲法裁判所が改正を合憲と判断した理由を分析する。この論点を、日本法における「仮名加工情報」と「自己情報コントロール権」説との関係と比較し、両法制に残された課題を浮き彫りにする。