インベスター・リレーションズ
Online ISSN : 2435-435X
Print ISSN : 2185-0798
論文
比較可能なESG評価の可能性と課題
越智 信仁
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ジャーナル オープンアクセス

2019 年 13 巻 1 号 p. 17-31

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抄録

<論文要旨>

 本稿では、比較可能なESG 評価の可能性と課題を探ることを目的に、ESG 情報の比較可能性による企業活動への市場規律向上を基本的視座として、AI(人工知能)による統一指標や信用格付への統合、SASB(サステナブル会計基準審議会)基準の活用可能性等を巡り、ESG 評価・格付等の発展可能性を論じるとともに、開示の画一化・短期化、財務偏重への懸念など今後の課題を考察した。

 そこでは、信用格付やSASB 基準による比較可能な定量・定性的情報のほか、ESG インデックスのばらつきを克服するユニークなツールとして、AI を活用したS-Ray による比較可能性向上のポテンシャルにも論及した。ただ、一般にAI はメディア報道を含む膨大な外部情報源の迅速な解析に強みを有する反面で、S-Ray を含め情報源・アルゴリズムの偏向等への疑念も現状では完全に払拭し切れない。今後は評価対象・方法等の透明性を増しながら、資本市場のみならず労働・消費等各種市場で広範に利用できる比較可能情報として発展していけるよう、信頼性確保に向けた制度インフラ整備も重要になると考えられる。

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© 2019 日本インベスター・リレーションズ学会
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