筆者らはこれまで音波を用いて,数cmの測位誤差に抑えられる高精度な屋内測位システムを開発してきた.音波は電波と同じ波であり,電波と同じように変調することによって,センサデータなどの伝送が可能である.本論文では,複数の音源(ユーザ端末)の測位機能と個別のデータ伝送機能を同一構成で共存させる方法を提案する.音源をスペクトル拡散して送信する前に,センサデータを用いて一次変調する.受信側では,拡散信号の相関処理によって受信タイミングを算出し,測位計算を行うとともに,逆拡散,復調処理によってデータを取り出す.受信処理のソフトウェア設計と実装とともに送信機を開発し,実験系を構築した.そして,静音,騒音環境下での特性実験を行い,測位機能,データ伝送機能を確認するとともにその特性を評価し,提案した手法の妥当性を示す.