衛星航法システムに対する補強情報を送信する補強システムとしてSBAS(Satellite-Based Augmentation System)が標準規格となっており,また準天頂衛星システムではSLASサービスが提供されている.これらが送信する補強メッセージには補強対象の航法衛星や電離圏グリッドを示すマスク情報が含まれており,補正値や完全性情報といった具体的な補強情報はマスク情報を介して解釈する.このマスク情報には識別情報が付されているから,マスク情報を参照するメッセージは,先行するマスク情報だけでなく,後続のマスク情報を参照することも可能である.SBASやSLASのTTFF(Time to First Fix)は航法衛星の航法メッセージに加えて所要の補強情報を全て受信するまでの時間として決まるが,後続のマスク情報を使用することで早期に補強情報が揃うことがあり,この場合はTTFFを短縮できる.後続のマスク情報を使用する手法について述べるとともに,日本のSBASであるMSAS及びSLASを対象として,関東地方においてTTFFをそれぞれ最大で110秒及び8秒だけ短縮する効果を確認したので報告する.