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頭蓋底骨転移により末梢性脳神経麻痺を示した肺癌の1例
今西 仁安達 弘貝原 汎水上 勇治北川 正信
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1975 年 29 巻 6 号 p. 637-642

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抄録

末梢性脳神経麻痺を来す疾患には多くのものがあり, これらには単独の脳神経麻痺の場合も少なくないが, 複数性にまたは兩側性に脳神経群が同時にまたは逐次障害される場合がある. ところで, 悪性腫瘍の頭蓋底骨転移による多発性末梢性脳神経麻痺の報告は極めて少ない. 我々は頭蓋底骨転移により末梢性多発性脳神経麻痺を呈した肺癌の1例を経験した.
患者は69才の男性で, 頭痛と複視を訴え入院した. 詳細な神経学的検査により, 左第II, III, IV, V及びVI脳神経, 右第II, V及びVI脳神経麻痺を示したが, 四肢の知覚, 運動神経症状を呈さず, 頭蓋内圧亢進も認めなかつた. 頭蓋X線検査により, 頭蓋底骨の溶骨性骨破壊像を認め, 胸部X線検査及び気管支鏡検査により肺癌と診断されたが, 患者は肺炎の合併により死亡した. 剖検により, 頭蓋底骨は癌により破壊され, 組織像は肺原発巣と同じ腺癌でほとんど置き換つていた.

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