抄録
食道癌患者は高令者が多く, 術前に何らかの心肺機能障害を有している者も多い. 術後の肺合併症は多くの場合致命的となるので, あらかじめこの合併症を知る方法として血液ガス分析を行つた. 同時に理学的所見, 胸部X線所見と比較した. 対象となつた2例のうち1例は肺合併症のため術後早期に死亡した. 他の1例は経過は良好であつたが, 早い時期よりHypoxemiaを来し, 比較的長期間この状態が続いた. このHypoxemiaはSmall airway closure, Variable shuntの増加によつて説明されているが, これらは術後の終痛や呼吸筋の障害などによる呼吸運動の低下が要因となる. これを発見するために術後における頻回の血液ガス分析の重要性を強調した. その対策として酸素療法が有効であるが, PaO2が低下するものでも呼吸運動の助けとなる体動が可能なものには, 不必要と考えられる.