抄録
軽症の僧帽弁狭窄症(NYHA重症度分類I度からII度)の21例を対象として詳細な換気機能検査を行つた結果, 肺気量, 1秒量, 1秒率, 静肺コンプライアンスは正常域にあり拘束性障害は認められなかつた. これに対し, closing volumeは19例(90%)が正常域を上回り, 著明な増大を示し, 動肺コンプラィアンスは検査を施行した11例申10例が正常域を下回り, 著明な周波数依存性を示した. 低肺気量位における最大気流速度の低下も著明であり, V25では18例が正常下限を下回つた. 同時に測定された肺動脈楔入圧は平均23±10mmHgと上昇していたが, 最大値は43mmHgであり. 肺浮腫はいまだ生じていないものと考えられた. また動脈血酸素分圧は肺動脈模入圧上昇に伴い低下する傾向が見られた. これらの結果は換気機能障害の主体が細気管支領域にあることを示唆するものであり, それは怒張した肺血管により, 硬いbronchovascular sheath内で細気管支が圧迫されたためであると考えられた.