抄録
上部消化管出血は腎移植に伴う重篤な合併症の一つである. 我々は1974年5月より1977年2月までに18回の腎移植術を施行して, うち4例に上部消化管出血を経験している. 4例中1例は十二指腸潰瘍出血例であり, 残りの3例は胃, 十二指腸のびらん症例であつた. 腎移植後の消化管出血の原因としてはいくつかをあげることが出来るが, このうち移植前に好発する潰瘍性病変, いわゆるUremic ulcerは最も重要な原因と思われる. 我々はUremiculcerを検討する目的で, 102例の慢性腎不全症例及び27例の腎移植症例に胃, 十二指腸内視鏡を施行した. 最も特徴的な所見は胃, 十二指腸のびらん性(潰瘍性)病変で, この所見は長期透析例で顕著であつた. Uremic ulcerはひとたび生ずると投薬治療に抵抗して極めて難治性である. 治療上最も重要なことは内視鏡的にUremiculcerを早期診断し, 腎不全早期より予防的投薬を開始することである.