1979 年 33 巻 1 号 p. 65-71
下垂体腺腫の鼻咽腔内進展は現在まで18例が記載されているに過ぎない. 我々は38才, 男の鼻咽腔内進展を示した巨大下垂体腺腫を経験した.
本例は鼻出血, 鼻漏で発症し, 3年間の無症状期を経て視力低下, 視野狭窄で入院した. 嗅裂部の肉芽腫様腫瘤の生検により嫌色素性下垂体腺腫の組織診断をえた. 神経放射線学的, 特にCT scanにより鞍外伸展が著しく蝶形骨洞, 視床下部にまで達した隔壁を有する多房性腫瘤が: 確認された. そこで両側前頭開頭により腫瘍を亜全摘し, 組織診断は鼻咽腔内腫瘤と同じ所見が得られた. 本腫瘍はprolactin産生腫瘍で術後血漿prolactin濃度は逆に上昇した. これら内分泌学的所見を中心に文献的考察を加えた.