抄録
高速液体クロマトグラフィーによる尿中カテコールアミン(CA)の直接分析法を用いて, 脳動脈瘤手術の前, 中, 後期における尿中CAの推移を追跡した. すなわち, 3例の片側内頸動脈閉塞症患者を対照とし, 慢性期の脳動脈瘤のネツククリツピング術後, 良好な経過をとつた1例, 急性期の脳動脈瘤のネツククリツピング術後の経過中, 持続的に脳圧亢進症状を呈した1例, また脳腫瘍摘出後, 脳出血を来した1例につき尿中CAの動態をそれぞれ対比検討した.
尿中CAのもつ生物学的意義, また分析手段についてなお未解決の問題も存在するが, 脳圧亢進症状の有無により尿中CA値には著明な差が認められた. この観察成績から, 尿中CA値の増加は脳圧亢進状態を示唆するparameterとして用い得ると考えられた.