抄録
6ヵ月以上経過追跡した慢性膵炎患者40例につき血清リパーゼ, 血清アミラーゼ活性値と症状, 予後との対応を検討した. 対照例は慢性膵炎以外の膵疾患, 胆道疾患及びリパーゼ, アミラーゼ値に影響する疾患を除いた消化器疾患患者40例, 正常人28例である. 慢性膵炎群と他疾患群, 正常群の両酵素活性値の間には有意差があり, また慢性膵炎例中の中等度~高度の症状を示す寛解遷延例と軽症で早期(6ヵ月以内)に寛解する症例の各酵素活性値間にも有意差が認められた. また各症例の慢性膵炎症状増悪, 軽快と血清リパーゼの増減傾向にも相関が認められた.
経過中アミラーゼとリパーゼが解離する例には症状が軽く早期に寛解するものが多い. P-Sテスト時の外分泌酵素誘発試験ではアミラーゼ, リパーゼいずれかの上昇はかなり高率であり, 正常群での脂肪食アルコール負荷後の成績から見てもその評価には再検討の余地がある. 更に各疾患でのリパーゼ測定時には測定前の食事制限を考慮する必要がある.