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脾剔後10年で再手術した特発性門脈圧亢進症の1例
吉岡 秀憲安冨 徹古田 睦広
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1981 年 35 巻 11 号 p. 1033-1036

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抄録

特発性門脈圧亢進の診断のもとに開腹し, 10年後再び開腹した症例を経験したので全経過と病理所見を報告する.
症例は61才の女性で10年前食道静脈瘤からの出血, 脾腫, 汎血球減少症を認め, 特発性門脈圧亢進症と診断し, 脾剔, 近位脾腎静脈吻合を行つた, 肝は肉眼的に正常であつた. 2年後再吐血を来し, 経胸的食道離断を行つた. 8年間良好に経過した後, 吐血を来し, 紐腹的食道離断を行つた. この時採取した肝の生検所見は, piecemeal necrosisと細胞浸潤がみられ, chronic active hepatitisであつた. 肝細胞はfat degenerationを認め, liver cell cordの配列に乱れがあつた. 検査成績は, 脾別後血球減少症は改善し, 肝機能はほぼ正常であつた. γ-globulin分画が増加し, IgGが高く, RA因子陽性で細胞性免疫が低下していた.
本症例はcryptogenic chronic active hepatitisと考えられ, 免疫応答の変化があり, 本症の病因との関連に興味深いものがある.

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