抄録
症例は, 昭和53~56年の約3年間に上部消化管出血のために本院を訪れ, 出血発現後7日以内に内視鏡検査を施行した150例を対象とした. 内訳は, 胃潰瘍69例, 出血性胃炎24例, 胃・食道静脈瘤15例, 十二指腸潰瘍14例, 胃癌8例, Mallory-Weiss症候群8例などであり, 出血源不明は6例であつた.
150例中, 116例は内科的治療で止血し, 34例(23%)に手術がなされ, 死亡例は13例であり, この内7例は胃・食道静脈瘤からの出血による死亡であつた.
本検査施行前に, 脈拍, 血圧, 心電図などを施行し, 原則として血管確保の上本検査を施行し, 偶発症は経験しなかつた. 緊急検査では, 血清総蛋白の低下, 白血球数の上昇を認め, 死亡例ではα2, γグロブリン(%)の低下, 桿状球(%)の上昇などが目立つた. 本検査により早期に出血部位を確認し, 治療方針(手術適応), 予後を判定することは安全であり, 大変有意義であることが再確認された.