結核で形成される肺空洞は結核菌と宿主との間の細胞性免疫反応の結果形成される. そのさい菌体と感作リンパ球が接触するとリンホカイン(LK)が産生されるが, これによつて多数のマクロフアージ(Mφ)が病巣部に集合し活性化する. そして盛んに食菌を行うが, 結核菌は特有の細胞壁構造をもつため消化され難く, Mφも障害をうけてリソゾーム酵素を放出し, 周辺肺組織も障害されて壊死になり, 軟化融解そして空洞を形成するのではないかと考えられる. そこでこれを証明するためにLKと結核菌細胞壁骨格(CWS)を混じてウサギの肺内又は皮内に注射し, LKでMφを集合活性化してCWSを貪食させると, 約1週後に組織の壊死, 欠損を認めた. なおCWS, LK単独では壊死を認めなかつた. このことから結核病巣では細胞性免疫反応が発生するが, そのさい組織の壊死, 空洞形成には結核菌特有の細胞壁構造が重要な役割を演ずると考えられる.