抄録
著者らは最近まれな原発性び漫浸潤型S状結腸癌の1例を経験したので, 文献的考察を加えて報告する. 症例は47才男性, 主訴は腹痛, 便柱狭細化で, 注腸造影所見ではS状結腸に13cm長の狭窄像, 大腸内視鏡検査でCobble stone様変化, 生検で低分化腺癌が証明された. 切除標本ではS状結腸には13cm長の境界不鮮明な円筒状狭窄があり, 壁肥厚が著明で粘膜面は穎粒状であつた. 組織学的にはSignet ring cellの混在する低分化腺癌が主体をなし, lymphangiosis carcinomatosaが著明であつた.
大腸の原発性び漫浸潤型癌は著者らの症例を含めて1982年4月までに集計し得た本邦報告例は48例であり, 文献的にその臨床的, 病理学的特徴を検討した.