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小児の頭蓋内出血後の後遺症に対する漢方治療
安達 原曄子市来崎 潔
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キーワード: 頭蓋内出血, 漢方, 水頭症
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1984 年 38 巻 3 号 p. 299-302

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抄録

頭蓋内出血は, 周産期あるいは乳児期では重篤な後遺症をひきおこす. 漢方方剤は頭蓋内出血後の保存的療法として効果があるように思われたので, ここに3例を報告する.
症例1は生後26時間で脳室内出血を来した直後に, 漢方方剤による経口的治療を行い, 水頭症には至らなかつた患者であり, 頭囲拡大は一時的におこつたが, 後遺症を残さずに治ゆした. 症例2は多発奇形を合併しており, 生後10時間で脳室内出血がみられ, 徐々に水頭症に移行した. 漢方方剤は生後6ヵ月にはじめて使用したが水頭症は予防し得なかつた. 方剤としては桂枝荻苓丸, 五苓散が用いられ, 症例1では凝血の消失や, 頭蓋内圧亢進に効果がみられたように思われる. 症例3は頭部外傷後の出血のため, 精神運動発達の遅延がみられ, 肝機能異常も伴つていたが, 補中益気湯の内服で肝機能の正常化とともに精神運動の発達が促進した症例である.

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